「美術評論のこれまでとこれから」菅原伸也

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

クレア・ビショップ『人工地獄 Artificial Hells』(2012)

20世紀初頭から現代に至る美術の歴史を参加型アートという観点から語り、いわゆるオクトーバー派による教科書的な美術史本である『Art Since 1900』とは異なる歴史観を提示した重要な著作。個人的にも、広義のモダニズムから離れ、アートにおける政治性・社会性に眼を向ける大きなきっかけとなった本である。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

特に日本の美術批評は、いまだそこに残っている男性中心主義や西洋中心主義、近代主義を超えて、フェミニズムやポストコロニアル・デコロニアルな視点を積極的を取り入れたものになっていくべきであろう。

 

 

著者: (SUGAWARA Shinya)

美術批評・理論。1974年生まれ。コンテンポラリー・アートそしてアートと政治との関係を主な研究分野としている。最近の関心は、アートと移動性について。主な論考に、「質問する」(ART iT)での、田中功起との往復書簡(2016年4月~10月)「タニア・ブルゲラ、あるいは、拡張された参加型アートの概念について」(ART RESEARCH ONLINE)がある。他には、奥村雄樹(『美術手帖』2016年8月号)やハンス・ウルリッヒ・オブリスト(Tokyo Art Beat)へのインタビューがある。最近の論考には、「現代的な、あまりに現代的な——「ユージーン・スタジオ / 寒川裕人 想像の力 Part 1/3」展レビュー」(Tokyo Art Beat)や「同一化と非同一化の交錯——サンティアゴ・シエラの作品をめぐって」(『パンのパン 04下』近刊)。

連絡先:shinyasugawara.critique[at]gmail.com

Shinya Sugawara is an art critic based in Tokyo. His major area of study is contemporary art and the relationship between art and politics. He is currently researching art and migration. He has written exhibition reviews for Bijutsutecho and Tokyo Art Beat, and essays such as “Tania Bruguera, or the Expanded Concept of Participatory Art” (ART RESEARCH ONLINE) and “Intersection of identification and disidentification: Around the works of Santiago Sierra” (Pan no Pan 4 vol.3 forthcoming). He has also interviewed artists and curators like Yuki Okumura(in 2016)and Hans Ulrich Obrist (in 2020) .

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