I氏の展覧会で展示した市原尚士の展評をご紹介する本稿、今回は第二弾になります。下手な文章が多くて、申し訳ございません。
【展示名】運河で生きる
【会場】横浜都市発展記念館(横浜市)
【会期】2025年1月18日~4月13日

「運河で生きる」の展評
【展評】
美しい都市の条件を考える。色々な要素があると思う。私が最優先したいのは海、河、湖、沼といった水辺から街を見た時にどのように見えるのか、という点だ。街の中にきれいな運河がありますねーではない。水上から街を見た時に美しいか否かが重要だ。言いかえれば都市が水に対する「捧げ物」たりえているか否かが問われているといってもいいだろう。ヴェネツィア然り、ヴァラナシ然り、瀬戸内海然り、水上から陸地を見つめた時の、あのうっとりする感じはなにものにも代えがたい。横浜や東京の水上で生きた人々の歴史を紐解いた本展を見ること。それはそのまま千葉の幕張のべか舟漂う水辺で育った自身の記憶をたどる旅に地続きになっていた。遠浅の海、その水辺でバカガイやらハマグリやらがぶつぶついっている姿を飽かず見つめていた私は、50年前の私は、今も私という、“大樹”の根っこの部分として生きている。波打ち際を走り回る…誰もが持つ記憶を鮮やかに想起させる。
【自註自解&採点】
文章の締めの部分がいささか分かりにくいものの、都市は水上から見てこそ、その魅力が分かる、という全体の趣旨は比較的、独自性を持っており、面白いだろう。自身の記憶と結びつけている点も好感が持てる。故に68点。
【展示名】普後均「On the Ground」
【会場】MEM(東京・恵比寿)
【会期】2025年5月17日~6月1日

普後均の展評
【展評】
蝉の死骸というものは夏になれば、あちこちに落ちていて特別、珍しいものでも何でもない。しかし、それを表側、裏側と丁寧に写真に収める人は珍しい。隅々までピントを合わせ、光もきれいに全体に回らせて撮っただけでは終わらないから芸術家というものは恐ろしい。死骸をすりつぶして粉にしてボトルに入れてコルクの栓までしめている!!「蝉は意外に硬くて、きれいにすりつぶすのは大変だったよ」と語る普後均という男、これはもう、立派な芸術家なのである。写っているものが重要なのではなく、写っていないものに十分、意を注ぐのが普後の仕事の大きな美質であるのだ。本展で写っていないものは一体、何だろう。それは死だろう。骸は撮影できても、死そのものはどうしても撮れない。死んでもあの世で撮影できるのであれば、あえて死を選ぶ芸術家も出てきそうだが、実際は死んだら写真は撮れない。死んだら死にっきり。普後は撮影し、すりつぶし、葬送している。
【自註自解&採点】
写っているものが重要なのではなく、写っていないものに(後略)、の一文を最後に持ってきた方が分かりやすいし、格好良かった。とはいえ、文章全体としては比較的、うまくは書けている気がする。故に64点。ちょっと自分に甘いかも?
【展示名】洋画と手芸
【会場】nca(東京・六本木)
【会期】2025年3月21日~5月10日

「洋画と手芸」の展評
【展評】
兵器、たとえば刀、銃、ミサイル、地雷などなどはどれもこれも硬いーーこれは男そのものであって死を招くろくでもないものである。編物・刺繍・裁縫といった手芸は柔らかいーー誤解を恐れずあえて二分するなら、これは女そのものであって生を育むものであろう。硬いものは一見すると強そうなものだが実は弱い。柔らかいものは反対に弱々しく無力に見えるのだが実はとても強い。兵器は手芸に対して特に何も働きかけられない。しかし戦車やミサイルを編物で包み込んでしまえば、もはやその兵器は力を失ってしまう。しょせん、“男”の腕力なんてその程度のもの。本展でも男たちが偉そうに支配していた美術界のヒエラルキーをソフトに、なおかつ強く解体してみせる手芸の可能性が提示されている。抑圧されればされるほど、いじめられればいじめられるほどただの布きれはどんどん強くなる。私たちは布のしなやかな強さから勇気をもらい、明日を生きる勇気をたっぷりともらう。
【自註自解&採点】
展示の概要がさっぱり分からないし、男⇔女の素朴な二分法で文章を進めている点が幼稚である。ただし、男的なるものへの怒りがはっきり示せている点は評価できる。展示の概要はいまどき公式HPで大体分かる。故に67点。これまた、自分に甘い?
【展示名】明日少女隊「WE CAN DO IT!」
【会場】北千住Buoy(東京・北千住)
【会期】2023年7月22日~8月6日

「明日少女隊」の展評
【展評】
社会を変革するなんてできっこないさ、と無力感を感じた時には明日少女隊の活動を調べてほしい。フェミニズムをテーマに様々な活動を続けてきたグループ「明日少女隊」は、応用力と機動力を武器に素晴らしい成果を上げてきました。広辞苑の「フェミニスト」の定義にかつて入っていた「女に甘い男」というにやにや笑いの不潔な語釈を変えさせた手柄は高く評価できるでしょう。性的誇張がほどこされた萌え絵キャラクターへの抗議も立派な行動です。このグループの活動を指して「表現の自由を侵害している」などと語る方は「表現の自由」をまったく理解していないと思います。ヘイトスピーチをする方にやめさせようとはたらきかけたら、「ヘイトスピーチする自由がある」と言い返されるようなものですから。ヘイトスピーチ、各種のハラスメントをする自由なんてどこにもありません、まともな市民社会には。野蛮なただの犯罪者たちと戦う明日少女隊、私は大好き!!
【自註自解&採点】
明日少女隊の活動が、大手メディアでまだまだ少ししか取り上げられていない事実には暗澹たる気持ちになる。いまだに男中心のメディアにはあまり期待できないか。もっと取り上げられるべきフェミニズムアートを取り上げた分、加点して69点。(2025年7月13日18時59分脱稿)