「美術評論のこれまでとこれから」沖啓介

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

“The Dematerialization of Art”
Lucy R. Lippard 、John Chandler著
1968年に書かれたアートの非物質化についての論考で、その後のアートの行方を未分化ではあるが言いあてたもの。リパードらの直感的な状況把握であるが、これが書かれた6年後の1973年に出た”Six years”では、少し整理が進んできて、例えば概念芸術と概念的な芸術、つまり大文字のCで始まるものと小文字のcで始まるものの区別が出ていたりする。
やがて映像やサウンドなどのメディアが、常用されるアート表現方法として定着したのは、この流れにあるだろう。またこのあたりから次第に”キュレーショナル・アクテヴィズム”などの動きが生じたり、男性中心傾向への批判など、その後のアートの動向につながっている。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

伝統的な美術評論の役割は存続するだろうが、現在でも(あるいは過去の例でも)批評よりもキュレーションが状況を切り開くように、キュレーションの批評的役割は大きい。キュレーションの批評的役割がますます重要視される。

 

 

著者: (OKI Keisuke)

アーティスト/クリエイティブ・コーダー/ライター、多摩美術大学卒業(1978)李禹煥ゼミ。カーネギーメロン大学SfCI研究員(97-99)。ポスト・ミニマル作品を発表する一方、ビデオギャラリーSCANの活動に関わり公募審査などを担当。今日の作家展、第一回横浜トリエンナーレ、Transmedialeなどに出展。第16回「美術手帖」芸術評論佳作入選、Leonardo Vol. 28, No. 4 (MIT Press)、インターコミュニケーション(NTT出版)などに執筆、訳書に「ジェネラティブ・アート Processingによる実践ガイド」