「美術評論のこれまでとこれから」加須屋明子

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

Anda Rottenberg氏の「Postindustrial Sorrow」(2000、Kunsthalle, Wiesbaden, DE)展に寄せた同題のテキスト 東欧革命以後の混乱と、それに翻弄される作家たちの姿を的確かつ哀愁を込めて論述する文章であり、理知的な鋭さと情動的な深みが同時に伝わる優れたテキストとして記憶に残る。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

情報流通の速度とプラットフォームが飛躍的に変化し、またAIの応用可能性によって美術評論のあり方も大きく変わると思います。ただしそこでの批評の役割は一層重要なものとして位置付けられると思います。

 

 

著者: (KASUYA Akiko)

1963年兵庫県生まれ。京都大学文学部哲学科卒業、同大学院博士後期課程単取得満期退学(美学美術史学専攻)。ヤギェロン大学(クラクフ、ポーランド)哲学研究所美学研究室留学。国立国際美術館主任学芸員を経て、現在、京都市立芸術大学美術学部・大学院美術研究科教授。専門は近・現代美術、美学。主な展覧会企画は「芸術と環境-エコロジーの視点から」1998年、「いま、話そう 日韓現代美術展」2002年、「転換期の作法―ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術」2005年、「塩田千春 精神の呼吸」「液晶絵画」2008年、「死の劇場―カントルへのオマージュ」2015年など。2011年より龍野アートプロジェクト芸術監督。著書に『現代美術の場としてのポーランドーカントルからの継承と変容』(創元社、2021年)、『ポーランドの前衛美術??生き延びるための「応用ファンタジー」』( 創元社、2014年)、『ポーランド学を学ぶ人のために』(共著、世界思想社、2007年)、『中欧のモダンアート』(共著、彩流社、2013年)、『中欧の現代美術』(共著、彩流社、2014年)、翻訳に『アヴァンギャルド宣言??中東欧のモダニズム』(共訳、三元社、2005年)、『珠玉のポーランド絵画』(共訳、創元社、2014年)など。

Email: kasuya@kcua.ac.jp