「美術評論のこれまでとこれから」勝俣涼

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

Alex Potts, The Sculptural Imagination: Figurative, Modernist, Minimalist. (Yale University Press, 2000.)

新古典主義からポスト・ミニマリズム周辺にいたる彫刻表現に着目し、関連する言説を広く検証しながら、彫刻的なものが導く動的な経験や、その両義的な性格を見出していくさまが印象的な著作です。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

同時代の作家や作品、美術をめぐるさまざまな状況について考えると同時に、歴史上の定式化された評価の枠組みを再検討し、別の文脈への切り口を探究するアプローチもまた、(これまで以上に)重要となるように思います。その意味で美術批評の実践は、美術史研究やキュレーションといった領域にも内在、あるいは密接に連関するものとして、さまざまな専門性や活動形態をもつ人々の間で共有されうる活動だと考えています。

 

 

著者: (KATSUMATA Ryo)

1990年生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程 芸術文化政策コース修了。美術批評・表象文化論。主な論文に、「「異世界もの」の「教室」--なろう系・キャラ・ゲーム」(『武蔵野美術大学 研究紀要 2020-no.51』、武蔵野美術大学、2021年)、「彫刻とメランコリー -マーク・マンダースにおける時間の凍結-」(『武蔵野美術大学 研究紀要 2021-no.52』、武蔵野美術大学、2022年)など。主な評論に、「いかにして「無い」を知りうるか?」(「不在の観測」展カタログ、岐阜県美術館、2022年)、連載「コンテンポラリー・スカルプチャー」(『コメット通信』、水声社、2022年-)など。