「美術評論の再起動」0-1 特集について

2022年度会報編集委員長 遠藤水城

 

今特集「美術評論の再起動」は、何か特定の事柄に対する論考を集めたものではない。統一感のある「特集」ではなく、各執筆者の「書きたいこと、書くべきこと」に内容を委ねる方針をとった。当然バラバラな内容になるはずだったのだが、予想に反して、ある種の連鎖が発生していると言えるだろう。批評言語のあり方をめぐる芦田・gnck・きりとりの三角形を勝俣-藪前の彫刻ラインが横切っていく。匿名者のパフォーマティヴィティと薮前の状況へのコミットは好対照と言えるし、gnckの公共性への信頼は薮前にも共有されている。きりとりと匿名者の間にも何かある。巻頭インタビュー及び対談はこれらの布置の背後で、あるいは前面で、ただただ具体的な何かによって、ことがただならぬ方向へ進みつつあることを示している。到底収まりが良いとは言えないが、かといってそれぞれが勝手にやっているわけでもない、このリアリティから美術評論の現在地と展望を感受して頂ければ幸いである。

なお、これまで会長による巻頭言が掲載されてきたが、本特集では対談において四方会長に登場頂いたため割愛することとした。その分、本編を楽しんで頂ければ幸いである。