【会員短信】「「ゲームの美学」プロジェクト」徳山由香

「ゲームの美学」は、美術とゲームの相関を探ることを意図した、美学/感性学者の吉田寛氏とアーティストのジェレミー・コーティアル氏、そして筆者による共同リサーチプロジェクトである。2023年1月筆者の企画による、吉田氏の専門とするゲーム研究の理論を紹介するトークに、デジタルゲームを題材としたアートを実践するコーティアル氏が合流したことを契機としてプロジェクトは始まった。
「ゲームはルールのある遊び」であるという端的な定義にしたがいながら、人間による非生産的な営みである「遊び」の観点からアート、広義のゲーム、デジタルゲーム、スポーツ等を俯瞰していくと、それらの行為を成す本質が見えてくる。アートは、アーティストによる自由な創造、あるいは鑑賞者の自由な想像力のみによって立つのではなく、実はさまざまなルールをめぐってその逸脱を試み、新しいものの見方を獲得する経験によって成立するものだ。
主知主義に陥りコンセプトを「ゲーム的に」視覚表現にあてはめたような仕事も目撃される昨今、ゲームに熱中する子どもや大人たちと、アートの情熱を追い求める私たちとの間の接触点を探ることで、遊ぶこと/見ること、逸脱することの本質を見つめ直すきっかけとなっている。そしてそれにより、見る悦びを取り戻しつつもより深いアートへの眼差しを手に入れることができているように思う。
デジタルゲームに関しては門外漢の筆者にもかかわらずこの短期間のリサーチにすでに大きな手応えを感じることができているのは、ひとえに共同研究者の吉田氏、コーティアル氏に加え数々の協力者の理解と支援の賜物である。筆者の拠点とするドイツと両氏それぞれの拠点である日本、フランスと距離を分かちながらの意見交換は、常に新しい視点を与え、さらに多くの同志との出会いをもたらしている。我々の探究が現代の美術表現を、マーケットやアート系メディア、美術館等公的機関などを中心とした「現代アート」村の人々だけでなく、より広く開かれた人々との分かち合いの中で育てていくことの一助となれば、この上ない喜びだ。

*「ゲームの美学」は公益財団法人小笠原敏晶記念財団より2023年度現代美術調査・研究の助成をいただきました。ここに記して心より御礼申し上げます。

*ゲームの美学 Aesthetics of Games [マガジン] Yuka Tokuyama
https://note.com/yuka_tokuyama/m/m931095aa0411