「美術評論のこれまでとこれから」五十嵐太郎

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

これまで、というと考えだすのが大変なので、ここ数年ということで、「国立西洋美術館コレクションによる山形で考える西洋美術丨高岡で考える西洋美術――〈ここ〉と〈遠く〉が触れるとき」のカタログ論考を挙げたいと思います。学芸員の新藤淳によるテキストだが、コロナ禍のタイミングで、日本近代以降の西洋美術の受容の意味と歴史について、山形の新海竹太郎と富山の本保義太郎を軸にすえながら、パラレルに論じ(誌面上では、レイアウトや文体も上下で並行して進行するという凝りよう)、二館のキュレーションを遂行した。まれにみる批評的な展覧会だった。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

雑誌や書籍など、紙のメディアが縮小しているので、どうしても自主制作、語り、ネットの活用が増えるのだと思います(それが良いことかどうかは、別として)。筆者も2021年からシラスの動画配信プラットフォームで番組をやっており、何ができるのかを実験的に試みているところです。