「美術評論のこれまでとこれから」出原均

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

1960年代末から70年代前半、美術の概念化、物質化が進んだ時代に、その、語りがたい美術についてなんとか手探りで言語化しようとした評論家、作家たちの営為がもっとも刺激のあるものだと思います。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

かつては美術を総体として論じることができたように思う。あるいは、それは幻想に過ぎなかったのかもしれないが、それでも評論家は美術の全体を意識していたように思う。現在、美術評論が可能なのは、美術の或る部分にすぎないのではないか。もしかすると、その反省、あるいは、反動として、美術を総体において論じる動きがあらわれるかもしれない。少なくとも、そのような射程を呈示しようとするものが出てくるのかもしれない。

 

 

著者: (DEHARA Hitoshi)

1958年徳島県生まれ。1986年広島大学地域研究科修士課程修了。同年広島市現代美術館の準備室に入室、1989年の開館後、同館で学芸員。2007年兵庫県立美術館に移籍。企画した主な展覧会は、個展では、篠原有司男(1992年)、戸谷成雄(1995年)、菅木志雄(1997年)、柳幸典(2000年)、横尾忠則(2002年、2014年)、草間彌生(2005年)、榎忠(2011年)、舟越桂(2015年)など。それ以外では、「ヒロシマ以後」(1995年)、「表出する大地」(1997年)、「現代絵画のいま」(2012年)、「1945年±5年」(2016年)などがある。主な論文は、「『インスタレーション』の展開と受容」(2000年)、「白髪一雄のフット・ペインティングの変遷 1955-1964」(2012年)、「田中敦子《作品》(1958年 兵庫県立美術館蔵)と《作品》(1959年 広島市現代美術館蔵)について」(2015年)、1950年代までの原爆主題の美術を扱った「記録と表現再論」(2016年)など。