「美術評論のこれまでとこれから」藤田一人

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

土方定一「昭和期美術の批判的回想」と、そのテーマに連なり戦後日本美術の方向性を問うた、土方に林文雄、植村鷹千代等が展開した「リアリズム論争」。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

美術評論とは、美術作品や美術家について論じるだけではなく、むしろ美術作品や美術家の仕事を通して、“いま”という時代、社会のあり方と展望を論じるものだと考えます。質問1で戦後間もなく戦争と敗戦に至る日本美術界のあり方への批判と戦後日本美術の方向性を問うた美術批評を挙げたように、これからの美術評論も批判的な現状把握と将来への可能性を論じ合うものであってほしい。そして、美術専門家でけではなく、幅広い分野の人々がそれに参加することも大切です。ただ、現状ではかなり難しくはあるでしょうが…。

 

 

著者: (FUJITA Kazuhito)

美術ジャーナリスト/美術評論家。1960年大阪市生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。美術雑誌「月刊美術」編集部を経て、1999年以降、フリーの美術ジャーナリスト、評論家として新聞、雑誌で美術批評、美術界ドキュメントを執筆。著書に「SKY SCAPEの画家 沢田哲郎」(阿部出版 2004年)、共著に「高橋節郎 漆・黒と金の物語」(実業之日本社 1995年)、「三谷青子作品集」(ARTBOXインターナショナル 2005年)、「時の三叉路 平澤重信作品集」(ギャラリーステーション 2012年)等がある。その他、中央大学兼任講師、東京工芸大学非常勤講師として教鞭をとる。

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