彩字記#1(採取者・市原尚士)

【COVID-19柱】
東京都渋谷区神宮前2丁目に立つ電信柱です。
I LOVE COVID-19
そう書いてあります。
燃える炎のような形象の内部にお地蔵様?
それとも道祖神?
このCOVID-19電信柱とたぶん対になっていると思われるのが、YOU MUST BE EMPTY‼電信柱です。
筆跡が似通っているので、同じ人物が描いたものと思われます。
電信柱は渋谷区立千駄谷小学校から、すぐ近くに立地する閑静な住宅街の中にありますが、日中でも人通りは少ないです。
「(コロナが)空っぽに違いない」と英語で書いてあるわけですが、「空っぽ」というのは何を意味しているのか?
そして、「私はコロナを愛しています」という柱とどう対応するメッセージなのか?
謎が謎を生む展開です。

【アラジンの魔法のランプ?】

JR関内駅(神奈川県横浜市)から歩いて5分くらいの場所にある空き地。
歩行者からもよく見える、割と目立つ場所に、アラジンの魔法のランプのような形象が横に3つ並ぶ。
上部、横に長い楕円が、人の目にも、天使の輪にも見えてきます。

【銀座の閉店舗前から、3人の「ひょっこりはん」】

昔、ご商売をやっていたお店が閉店したと思われる空間。
閉店舗に人が立ち入れないようにするため設置された仮設の壁面に描かれた形象。
英語のアルファベットと算用数字の組み合わせと思われるが、採取者には解読できませんでした。
お笑いタレント「ひょっこりはん」のような方が3人、こっちに向かって“ひょっこり”しています。


【旅の定義】

イタリア、サルデーニャ島南部に位置する都市カリャリで見つけた建物の壁面。
イタリア語で「よく旅に出るけど、いつも帰るとは限らない」と書いてありました。
この建物の住人がこんなことをわざわざ書くとは思えませんから、やっぱり落書きなんでしょうね。
はてさて、帰らない旅人は、旅人と言えるんでしょうか?
いつか、また帰ってくるから「旅人」と呼べるのではないでしょうか?
それとも、人とは「永遠に旅を続ける旅人」なのでしょうか?
ふと、西脇順三郎の「旅人かへらず」を思い出してしまいました。

(2024年6月9日19時58分脱稿)

*「彩字記」は、街で出合う文字や色彩を市原尚士が採取し、描かれた形象、書かれた文字を記述しようとする試みです。不定期で掲載いたします。

著者: (ICHIHARA Shoji)

ジャーナリスト。1969年千葉市生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。月刊美術誌『ギャラリー』(ギャラリーステーション)に「美の散策」を連載中。