弘前にシンポジウムで訪れた翌日、蟻塚学の事務所に立ち寄った。知人の住宅をリノベーションし、天井・屋根を再編したものである。もっとも、ここは住宅街の旗竿敷地だったため、最近、直接道路に面する背後の空き家を購入し、スタッフの住処としつつ、そこを貫通する道を通した。壁が切断され、唐突にむき出しになった居間は、十和田市にある目 [mé]の作品「space」を想起させる。これは十和田市現代美術館のプロジェクトだが、かつてスナックとして使われた建物の2階をくり抜いて、ホワイトキューブを出現させたものだ。ともあれ、蟻塚の事務所は、道を通したことを契機に、近隣の住民が参加できるイベントを開始するようになったという。すなわち、私有地をパブリックに開放している。




はりゅうウッドスタジオと近江隆の共同設計による仙台の都市計画の家Ⅱ(2003年)は、敷地内の一部を通り道として住宅地に対して開放していた。もともと敷地の両端で区画道路は途切れていたが、このプロジェクトによってつながり、散歩道として使われるようになった。つまり、個人の住宅でありながら、都市空間を豊かにすることを目的にしたことが、作品名の由来である。公共の空間でさえ、自由に使えなくする排除アートが増殖する現代において、これらは重要な試みだろう。

現代美術では、Chim↑Pom(チン↑ポム)が道に注目している。例えば、アートコレクティブの彼らは建築家の周坊貴之と協同し、高円寺のキタコレビルで開催した「道が拓ける」展(2017年)では、建築の中に道をつくり、「Chim↑Pom通り」と命名し、24時間、一般に無料で開放した。また台中の国立台湾美術館では、アスファルトで舗装された道路が建物の内外を貫通する「ストリート」という作品を発表し、そこでデモを行っている。現在、金沢21世紀美術館で開催中のSIDE COREの個展「Living road, Living space」も、ストリートカルチャーの感覚にあふれたものだ(3月15日まで)。いつもは有料の企画展示のスペースに無料で通り抜けができる道を通したり、壁にグラフティを施し、円形の展示室はスケートボードの場に変容している。またSANAAによる金沢21世紀美術館は、もともと公演のような開放的な空間をもつが、さらに建築をハックし、そのポテンシャルを切り開く。廊下にミニ・ギャラリー、展示室にミニシアターや彼らのスタジオを再現した空間を入れたり、光庭のひとつに登ることができる仮設の構築物を挿入し、屋上に展示された映像を鑑賞するといった新しい経験がもたらされた。そして美術館の展示室以外や都市空間にも、小さな作品が設置された。かくして、現代アートは公共性を鋭く問いかける。




(『建築ジャーナル』2026年2月号に寄稿したテキストを転載)

