本連載で米子でアーティスト・イン・レジデンスや街歩きなどを行うAIR475を紹介したが(「米子におけるAIR475の活動」『建築ジャーナル』2024年10月号)、7月に鳥取県を再訪したので、ほかのアートスペースを紹介したい。


鳥取市内のホスピテイル・プロジェクトは、鳥取大学が中心となって、長く空き家だった3階建ての旧横田病院(1956年)を2012年から活用している。興味深いのは、建築がユニークな円形プランであること。かといって全体の規模が小さいため、パノプティコンのような監視の空間ではない。設計は、横田浩医院長自身によるものらしい。「ホスピタル(病院)」の語源である「ホスピテイル」はラテン語で「来客のための大きな館」という意味をもち、異人としてのアーティスト、あるいは地域住民を受け入れることをめざした。そしてアーティスト・イン・レジデンス、展覧会、パフォーマンス、イベント、アーカイブ事業などを。ほかに捨てられない本を集めた「すみおれ図書室」、アーティストによる人が集まる庭づくりプロジェクトなどを行う。

鹿野町の鳥の劇場では、2006年から演出家の中島諒人が廃校になった小学校と幼稚園で劇団を開始し、地域と連携しながら活動し、演劇祭も開催している。アトリエ・ワンがアネックスなどを手がけるほか、案内してもらったAIR475の来間直樹と高増佳子の両氏も改修や舞台装置のデザインで関わってきた。

倉吉市では、2024年にオープンしたアート格納庫Mを訪れた。工業団地の割り箸メーカーの株式会社丸十が、空き倉庫とサイロをギャラリーに改造したものである。これはコレクターでもあるオーナーのアートで地域を豊かにしたいという強い思いから誕生した。設計は、TATERUが担当している。圧巻は、常設展示している原口典之の「Oil and Water」(2003)と超巨大なH鋼型の彫刻「Untitled FCS」(1990)だろう。前者については、オイル・プールのみは何度か見ていたが、水のプールとの組み合わせは初めてだった。また後者は、あまりに大きいため、いったん屋根を外して設営したらしい。なお、企画は郡田政之展を開催中だった。


ちなみに、倉吉では、旧明倫小学校の円形校舎(1955年)の保存運動に成功し、2018年に開館した円形劇場くらよしフィギュアミュージアムもある。そして今年、倉吉パークスクエアの横に、待望の鳥取県立美術館が誕生した。槇文彦の設計ゆえに、デザインの強いクセは出さず、モダニズムに通じる正統派の空間である。同館は、ラーニングやワークショップに力を入れており、今後、地域と連携していくだろう。ちょうど吹抜けでは、髙橋匡太さんによる光のインスタレーション「雲の故郷へ」を開催中だった。


(『建築ジャーナル』2025年9月号に寄稿したテキストを転載)

