「美術評論のこれまでとこれから」小泉晋弥

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

岡倉天心「泰東巧藝史」
講義冒頭で、「本講に美術の語は稍々(やや)妥当ならず」と説明して「巧藝」という言葉を用い、「日本」という国境を外して、「泰東」という視野を用意した。西洋由来の「美術」と「アジア」を注意深く避けて、作品に込められた意志と感情を、「真に味ふことが必要であります。これが巧藝の本当の美味であります。soul to soulにひっくひっくとするものがなければならぬのです」と学生に語りかける様子は、評論家がインフルエンサーであるという本質を教えてくれる。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

作品を前にして人々に語るという古来からの姿は、instagramであろうが、u-tubeであろうが、gallaryであろうが、museumであろうが一緒だと思われます。基本は天心がいうように「soul to soulにひっくひっく」とすることで、AIに「魂の震え」が出現するまでは、人間の存在証明という役割を果すでしょう。