「美術評論のこれまでとこれから」高橋綾子

質問1これまでの美術評論でもっとも印象的なものについてお答えください。

 

質問2これからの美術評論はどのようなものになりうるかをお答えください。

予見的には語れませんが、自らの活動の意志として、美術評論家連盟の定款に定められた「目的」をあらためて確認しています。特に「政治、地理、民族、経済、宗教、ジェンダー等の境界を越えた職業上の関係を促進」し、「表現と思想の自由を守り、推進」することが、これからの美術評論ひいては評論家、批評家を名乗る立場に課せられた使命だと理解しています。
美術評論を書き、読み、語り、さらに編むことで、記録の更新をしながら歴史への再検討を促していく。そのことには、特定の領域を頑なに守ることではなく、さまざまな境界をむしろ突破していく勇気と、創造への敬意が肝要です。
これからの美術評論が、五感を駆使した豊かで真摯な思索であるならば、まさに人間らしい営みになりうるでしょう。

 

 

著者: (TAKAHASHI Ayako)

名古屋造形大学教授
岐阜市生まれ、北海道大学文学部行動科学科卒業。岐阜県美術館学芸員嘱託員、愛知芸術文化センター(愛知県文化情報センター)学芸員を経て、2001年より大学教員となる(名古屋芸術大学を経て、2019年より名古屋造形大学)。2003年に創刊した芸術批評誌『REAR(リア)』の編集制作を中心に、美術評論と編集活動を継続。現代美術展の企画や運営にも取り組む他、戦後前衛美術への関心から、1965年夏に岐阜で開催された「アンデパンダン・アート・フェスティバル」(通称:長良川アンパン)の調査など、アートプロジェクトと地域についての調査研究を行っている。