【お知らせ】市原尚士の展示「I氏の展覧会」

霧に覆われた空を「無」が独り、飛翔する……。
そのように、我らの批評も軽やかにあれ!

これは、市原尚士と多くの人々が共同で作り上げる展示のマニフェストです。

批評、とりわけ美術批評って、どうしようもなく重々しいと思いませんか?
訳の分からない専門用語(ジャルゴン)を駆使して、賢者気取りの輩がいます。高名な師匠と自分がいかに深い交流をしていたか、とっておきの逸話をちょいちょい披露する「虎の威を借る狐」のような輩もいます。読めば読むほど美術が、アートが、大嫌いになってしまうーーそんな文章が世の中にはあふれかえっています。

書く人の顔ぶれがいつも同じなのも何だか嫌な気持ちになりませんか?
ある特定の方たちが、美術という業界を独占しているような気がします。その書き手たちは、大概、美術展の企画(キュレーション)をも担っています。もちろん、彼女、彼は「優秀」なのでしょう。だから、色々と重要な場に引っ張りだこになっているわけです。

だけど、「おいおい、待て、待て」と私は言いたい。アートへの情熱と深い知見を持っている人は、世の中にたくさんいるのではないでしょうか?
美術業界の“利権”を独占している輩よりも、はるかに素敵な文章を書ける方がたくさん存在していることを私は知っています。でも、その方たちの作品に光が当たることは、残念ながらほとんどありません。

このような状況に危機感を覚えた市原尚士(=I氏)と、原田直子氏(Gallery Camellia)は2024年に、ある夢を抱きました。「専門家でもなんでもない、一般の人による展評をDMと共にギャラリー内にたくさん並べて、多くの方に読んでもらおう」と。通常、展示はやったらやりっぱなしで、なかなか学芸員、キュレーターの皆さんに生の感想が届くことはありません。

約1年の準備期間を経て催行される本展では、何の忖度も大人の事情もなしで、一般の美術ファンの熱いメッセージを会場内に響きわたらせます。併せて、会場内には、年間5000以上の展示を鑑賞せずには生きられないI氏(=市原尚士)の情念を反映した文字やら文章やら声やらも溢れかえります。こちらも楽しみになさってください。

すべての芸術表現は、畢竟、「I was here」(=私はここにいた)ということを記録しようとする営みにほかなりません。人は必ず死すべき存在です。はかない、実に頼りない存在です。しかし、だからこそ、2025年●月●日、東京・銀座で私は確かに生きていた、存在していたということを記録せずにはおられない。

一人びとりが建立するささやかな“記念碑”としての展評をあなたにも読んでほしい。
空には霧がかかり、この先、晴れるのか、雨になるのかもよく分からない。
仮にそうであったとしても、小さくて、弱そうなあなた、独りの無よ、軽やかに飛べ!

霧は晴れたのか? 元気いっぱいな様子の「無」

展示の概要等は次の通りです。皆さんからの展評も募集中です。思いの詰まった文章、お待ちしております。展評を出品したいという方は、Gallery Camelliaの公式HPをご覧ください。応募の詳細が記されております。

展示名:「I氏の展覧会
とき:2025年6月23日(月)~6月28日(土)、会期中無休
じかん:各日とも、12時~19時、ただし最終日は16時終了
ところ:Gallery Camellia(東京都中央区銀座1丁目9-8奥野ビル502号)
主催:Gallery Camellia
入場料:無料
会期中のイベント:6月28日、「次元上昇日記」など数多くの連載を抱えるコラムニスト・辛酸なめ子さんとI氏によるスペシャルトーク「書くことの光と影」(有料)を開催予定。(2025年5月4日11時25分脱稿)

★本稿と関連する過去の拙稿。なぜ、市原が一般の方の展評をDMと共に展示したいと思ったか、その理由や背景がお分かりになると思いますので、ぜひ、併せてお読みください。

美術展のDMはもはや絶滅危惧種なのか? 市原尚士評

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著者: (ICHIHARA Shoji)

ジャーナリスト。1969年千葉市生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。月刊美術誌『ギャラリー』(ギャラリーステーション)に「美の散策」を連載中。