2022年度会報編集委員長 遠藤水城

今回の会報に際し、編集委員内では特集の内容を確定する作業が難航した。コロナ禍における文化のあり方、あるいはウクライナ戦争のこと。世界規模の環境問題や差別と分断など。美術評論を取り巻く現実は非常に厳しく、それに対するリアクションが求められているという共通認識はあった。しかし、同時に、美術評論の根本が見直されねばならないこと、美術そのものの再定義を通して社会と接続する新たな方法を構築することの重要性もまた共有された。今回の特集はそのような議論を経て、なるべく若い書き手に声をかけ、彼ら・彼女らがまずは書きたいことを優先するという手順をとった。多様な関心からなる論考が乱反射することで、美術評論の現在と未来を幾ばくなりと照らし出すことができていれば幸いである。

インタビューに貴重な時間を割いて頂いた千葉雅也氏、対談に参加頂いた四方幸子会長ならびにアンドリュー・マークル会員、寄稿いただいた会員諸氏に深く御礼申し上げます。また、編集補佐として尽力してくださった事務局の山内舞子さんにも深く感謝します。