現代京都藝苑2015
Kyoto Contemporary Art Network Exhibition 2015
素材と知覚――「もの派」の根源を求めて
Material and Perception: in search of the roots of Mono-ha
【企画趣旨】
日本人にとって、アートとは何か?
本展は、2015年春に日本の伝統的な文化的中心地である京都で、虚白院と遊狐草舎という二つの京町家を会場として現代日本美術のアクチュアルな一様相を国内外に紹介する。敢えてホワイトキューブではなく、どちらも築100年以上の和風の古民家で展覧会を行うことには、日本の伝統的な文化風土に基づきつつそれを活性化する新しいコンテンポラリー・アートのあり方を模索する意味合いを込めている。
幕末明治以来、「アート」が「美術」と翻訳輸入されて既に一世紀半以上が経過した。その間、本来の文化的土壌の差異がもたらす様々な混乱と創造が繰り返されてきた。その上で、私達はやはり美を求めることは人間の普遍的本性の一つであり、たとえ元は外来文化であってもアートは既に私達の生活の一部であるという認識から出発したい。そして、今日の現代日本美術が単なる現代西洋美術の模倣に留まらない独自の歴史と価値を持つことを提示したいと考えている。
本展のテーマは、「素材と知覚」である。この二つは、人間が世界に向き合う際の基本枠組である存在論と認識論に関わっている。つまり、相手はどのようなものであり、自分はそれをどのように捉えるかという問題である。本展では、こうした問題に対し特に鋭敏な感受性を示す作家の作品を展示する。
ある意味で、アートは常にこの素材と知覚の問題を表象してきた。しかし、本展が特に注目するのが、この二つの問題に深く関わり、今日の現代日本美術にも多大な影響を与えている1970年前後の「もの派」である。つまり、いわゆる「もの派」は、1968年の第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で関根伸夫が制作した《位相‐大地》に対し、李禹煥が提出した現象学的解釈に基づき、彼等に吉田克朗、小清水漸、成田克彦、菅木志雄、榎倉康二、高山登、原口典之等を含めた動向を示す芸術概念として理論化され歴史化されてきた。それにより、「もの派」が国際的に高く評価された功績は計り知れないほど大きい。しかし、ウンベルト・エーコが『開かれた作品』で説くように、優れた作品は多様な解釈を許容する。現在、「もの派」についても、従来の解釈に留まらない様々な作品理解や影響関係の考察が進んでいる。
例えば、従来の「もの派」理解では、関根、吉田、小清水、成田、菅が多摩美術大学で学んだ斎藤義重の構成主義的抽象絵画の感化はあまり注目されてこなかった。また、彼等の先輩に当たる高松次郎、飯田昭二、鈴木慶則等のイリュージョン・アートとの関係はようやく着目され始めたところである。これらはいずれも、前世代の問題意識の批判的継承という観点からは極めて重要な意味を持っている。また、1987年に開催された『もの派とポストもの派の展開』展におけるいわゆる「ポストもの派」という分類以外にも、教師として榎倉が東京藝術大学で林武史等に与えた影響や、小清水が京都市立芸術大学で松井紫朗等に与えた影響も改めて再考される必要がある。そして、「素材と知覚」の問題を多様に表現する作家達(河口龍夫・大西伸明・神山貴彦・外林道子・入江早耶)や、「もの派」に内包されていた問題意識に新たな観点から光を当てようとする現代京都のモノ学・感覚価値研究会アート分科会の参加作家達(近藤髙弘・大西宏志・大舩真言)、そして日本の伝統文化である華道(池坊由紀)が、「もの派」とどのように呼応するかを考察することもまた非常に興味深い問題であろう。
常に地に足を付けつつ、世界を新たな視点から自由に捉え直すこと――これが、「素材と知覚――『もの派』の根源を求めて」展が目指すものである。
会期:2015年3月7(土)-3月22日(日)
Dates: Saturday, March 7 – Sunday, March 22, 2015
会期中無休
Open Everyday
開館時間:午前10時~午後5時
Opening Hours: 10:00-17:00
共通パス:1,000円
Passport: 1,000yen
監修:山本豊津
Direction: Hozu Yamamoto
企画:秋丸知貴
Curation: Tomoki Akimaru
第一会場:遊狐草舎(〒603-8206 京都市北区紫竹西南町17-3)
Venue 1: Yukososya (17-3 Shichikuseinan-cho, Kita-ku, Kyoto)
展示:斎藤義重/飯田昭二/高松次郎/鈴木慶則/河口龍夫/関根伸夫/大西伸明/入江早耶
Exhibition: Yoshishige Saito, Shoji Iida, Jiro Takamatsu, Yoshinori Suzuki, Tatsuo Kawaguchi, Nobuo Sekine, Nobuaki Onishi, Saya Irie
第二会場:Impact Hub Kyoto(虚白院 内)(〒602-0898 京都市上京区相国寺門前町682)
Venue 2: Impact Hub Kyoto (at Kyohakuin) (682 Shokokuji Monzen-cho, Kamigyo-ku, Kyoto)
展示:関根伸夫/榎倉康二/小清水漸/林武史/近藤髙弘/松井紫朗/大西宏志/大舩真言/神山貴彦/外林道子/池坊由紀
Exhibition: Nobuo Sekine, Koji Enokura, Susumu Koshimizu, Takeshi Hayashi, Takahiro Kondo, Shiro Matsui, Hiroshi Onishi, Makoto Ofune, Takahiko Kamiyama, Michiko Sotobayashi, Yuki Ikenobo
主催:現代京都藝苑実行委員会
Organized by Kyoto Contemporary Art Network Organizing Committee
協力:一般社団法人 Impact Hub Kyoto
Assisted by Impact Hub Kyoto
後援:PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015/琳派400年記念祭委員会
Supported by Parasophia: Kyoto International Festival of Contemporary Culture 2015, Rimpa 400 Year Celebration Festival Committee
【関連イベント】
■「素材と知覚」展 公開シンポジウム「『もの派』の根源を求めて」
日時:2015年3月8日(日)10:00~12:00
場所:京都市美術館本館 PARASOPHIA教室(Class room)(※無料・予約不要)
基調講演①:「『幻触』と『もの派』について」
本阿弥清(NPO法人環境芸術ネットワーク代表・元虹の美術館館長)
基調講演②:「『素材と知覚』展について」
秋丸知貴(美術史家・インディペンデントキュレーター/「素材と知覚」展企画者)
総合討論
山本豊津(東京画廊代表/「素材と知覚」展監修者)
司会・進行:秋丸知貴
■「素材と知覚」展 オープニング・トーク
日時:2015年3月8日(日)16:30~17:00
場所:Impact Hub Kyoto(虚白院 内)(※無料・予約不要)
山本豊津(東京画廊代表/「素材と知覚」展監修者)
近藤髙弘(出品作家)
大西宏志(出品作家)
池坊由紀(出品作家) 他
司会・進行:秋丸知貴(美術史家・インディペンデントキュレーター/「素材と知覚」展企画者)
【第一会場:遊狐草舎】
撮影:田邊真理 Photo: Mari Tanabe
会場風景
会場風景
会場風景
会場風景
【展示作品】
関根 伸夫 《空相 – 思ふツボ》
Sekine Nobuo Phase of Nothingness – Wishing Pot
1973 31 x 30 x 10 cm
黒御影石 Black granite
提供:東京画廊+BTAP
斎藤 義重 《反対称 対角線》
Yoshishige Saito Dissymmetry Diagonal
1976 35 x 25 cm
紙 paper
提供:東京画廊+BTAP
鈴木 慶則 《裏がえしの相貌をした非在のタブロー》
Yoshinori Suzuki Nonexistent Tableu with an Appearance of the Reverse
1967 60 x 67.7 cm
油彩・キャンバス Oil, canvas
提供:東京画廊+BTAP
入江 早耶 《ビジネスザウルス》
Saya Irie Business Saurus
2010 5 x 13 x 27 cm
ビジネスシューズ Business shoes
提供:東京画廊+BTAP
大西 伸明 《denkyu》
Nobuaki Onishi denkyu
2013 15 x 6 cm
樹脂・金属・その他 Resin, metal, others
提供:MA2 Gallery
高松 次郎 《波の柱》
Jiro Takamatsu Pole of Wave
1969 115.5 x 9 x 9 cm
木 Carved wood
提供:東京画廊+BTAP
飯田 昭二 《Half and Half》
Shoji Iida Half and Half
1967/2005 48.5 x 40.5 x 40.5 cm
鳥かご・球体・鏡 Bird cage, ball and mirror
提供:鎌倉画廊
河口 龍夫 《赤い球体と青い球体》
Tatsuo Kawaguchi Red Sphere and Blue Sphere
1968 31.1 x 16.8 x 22.9 cm
プラスター・ガラス・鏡・電球 Plaster, mirror, glass, fluorescent lamp
提供:東京画廊+BTAP
【第二会場:Impact Hub Kyoto(虚白院 内)】
撮影:田邊真理 Photo: Mari Tanabe
【展示作品】
会場風景
池坊 由紀 花型《立花》
Yuki Ikenobou
2015年
近藤 髙弘 《火水》
Takahiro Kondo KA・MI
2014年-2015年
関根 伸夫 《花の門》
Sekine Nobuo Flower gate
2009年 67.5 x 64 x 31 cm
油土、髑木 Oil clay, dry tree
提供:東京画廊+BTAP
会場風景
大舩 真言 《WAVE#97》
Makoto Ofune WAVE#97
2014年
会場風景
大舩 真言 《Reflection field》
Makoto Ofune Reflection field
2015年
会場風景
会場風景
外林 道子 《體と臟 7》
Michiko Sotobayashi Body and Organs 7
2013年 70.3 x 66.5 cm
中国画仙紙、色彩墨、墨 Sumi and cinnabar ink on chinese paper
提供:東京画廊+BTAP
近藤 髙弘 《Reduction Reduction》
Takahiro Kondo Reduction Reduction
2015年
会場風景
神山 貴彦 《Untitled Untitled》
Takahiko Kamiyama Untitled Untitled
2015年 10.3 x 93 x 40.5 cm
合板、粘土、鉄 Plywood, clay, steel
提供:児玉画廊
神山 貴彦 《アディへ》
Takahiko Kamiyama Dear Addy
2015年 92 x 37 x 16 cm
ナイロンパーカー、MDFボード Nylon parka, MDF board
提供:児玉画廊
小清水 漸 《水の匣》
Susumu Koshimizu Water chest
1997年 103.5 x 45 x 45 cm
松、栃、水 Pine tree, horse chestnut, water
提供:東京画廊+BTAP
松井 紫朗 《ENTERRING-Kingyo Table Station》
Shiro Matsui ENTERRING-Kingyo Table Station
2013年 100 x 149 x 100 cm
木、陶器 wood, ceramic
提供:東京画廊+BTAP
林 武史 《草枕》
Takeshi Hayashi Kusamakura
2014年 55 x 74 x 49 cm
大理石 Marble
提供:東京画廊+BTAP
会場風景
榎倉 康二 《一つのしみ No.7 (Ed.3/20)》
Koji Enokura A stain No.7 (Ed.3/20)
1980年 74.5 x 107.5 cm
紙、オイル Paper, oil
提供:東京画廊+BTAP
近藤 髙弘 《Reduction Reduction》
Takahiro Kondo Reduction Reduction
2014年
会場風景
大西 宏志 《素材と知覚 Kissing》
Hiroshi Onishi Material and Perception: Kissing
2015年
大西 宏志 《素材と知覚 Kissing》
Hiroshi Onishi Material and Perception: Kissing
2015年
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